君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第9章 9
「キスシーン…追加…?」
『はい…。あの、一応私もプロですし、仕事なのできちんとしたいんですけど、あの…』
「うん、わかるよ。びっくりしちゃった、よね」
『そう、なんです。私…』
キス、したことなくて…。
そのの一言に、龍之介は脳内が沸騰しそうになった。
「え、仕事では…って事だよね?」
『は、恥ずかしながら…プライベートでも、なくて…ですね』
滾る気持ちを抑えて問いかけてみれば、見事に否定をされる。
無意識に、けれどしっかりと、龍之介はガッツポーズをした。
「天、あれやべぇぞ」
「ね。明日休みだっけ?見学しに行こうかな」
面白そう。
そんな天に、楽は、お前マジで腹黒いな…と若干引いている。
「…じゃあ、大切に、したい…よね?」
『……いえ、十さんがお嫌でなければ…貰っていただければ、と』
一瞬、思考が停止する。
もらって、いただけれ、ば…?それは、どういう意味なんだ?
いいの?
「……さん…それ、ちょっと…ずるい…」
『え?!あ、ごめんなさ…』
「いや!ごめん!俺の言い方が悪かった!!あの、嬉しいよ!!すごく!うん!」
『へ?』
「え?!あ…いや、えー、と…と、兎に角!明日!打合せちゃんとしよ!ね!明日!」
『は、はい!では、明日…よろしくお願いします』
「うん、大丈夫だからね?安心して。じゃあ…おやすみ」
『十さん…はい、おやすみなさい』
もう、この会話中何度目かわからない無意識のガッツポーズのまま、龍之介は電話を切る。
「…キス…ファーストキス…」
「…よくわかんねえけど、やっぱ俺も見学行きてぇ」
「でしょ?」
ほくそ笑む天と、じっと龍之介を見る楽に気付かぬまま、龍之介はもんもんとの言葉を思い出しているのであった。