君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第9章 9
とある日。
十龍之介は、事務所の控室で盛大なため息をついた。
「はぁ……」
まさか、自分がこんな思いをすることになるなんて思わなかった。
上京して、天と楽に出会って、この二人に恋をして、TRIGGERに恋をした。
だから今まで恋人など作ったことは無かったし、これからも作る気は無かった。
それなのにだ。
「どうしたんだよ、龍。撮影で疲れてるのか?」
「龍がそんな大きいため息つくなんて珍しいよね。僕たち喧嘩してないのに」
ね、楽。と龍之介から楽に視線を移す天。
思わず言い返しそうになったが、それ以上に龍之介の様子が気になったのか、楽もそうだな、と頷くにとどまった。
「俺は…なんて男なんだ…」
がっくりと肩を落とし、龍之介はひとり呟く。
ここ数日、ドラマ撮影で顔を合わす度に、龍之介はが何をどうしても頭から離れなくなってしまっているのだ。
恋人同士の役なのだから、撮影期間中はむしろに恋をしてもいいかもしれない。
けれど、今回は違う。絶対違う。撮影期間が過ぎても自分は絶対彼女に焦がれてしまう。
あの笑顔を、もっと見ていたいと思ってしまう。
「なんだよ、話せよ」
楽の言葉にそちらを見て、龍之介は実は…と、との出会いとそれからの日々を詳細に話した。
如何にが人として愛らしく、女優として素晴らしいかをとくとくと話し終えた時には、今度は楽まで肩を落としていた。
「龍…そりゃよ…」
「恋しちゃったんだね、龍」
仲間の二人にそう認められ、龍之介は小さく頷く。
「だよね…俺やっぱり好きなんだよね…でも17歳だよ…。陸くんや小鳥遊さんより年下だよ?俺23だよ?…犯罪だよぉ…」
「まぁ、相思相愛なら犯罪じゃあねぇけど…」
「向こうはどうなの?」
天の問いに、龍之介はそちらをちらりと見てからうーん、と唸る。
撮影も順調に進み、近日には佳境のシーンが待っている。
それまでにも、休憩時間は一緒に過ごしたり、ラビチャもよくかわしている。
他の共演者よりは格段に仲が良く、息も合う。
ただ、龍之介がに抱く、いわば恋心がにもあるかは正直分からない。