君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第77章 77
姉は、がこんなに自然に笑っているところなど、ここに居る時、少なくとも己の前では見たことがなかった。
いつもどこか遠慮がちで、貼り付けたような笑みが多かった。
不愛想な子だと思っていたが、彼らとやり取りを交わすを見てわかった。
彼女は不愛想なんかじゃない。可愛くない子ではない。
そうさせてしまったのは、家族だったはずの自分たちだったのだと。
「ジュース色々あるの?」
「あるよ。さっきのりんごジュースも美味しいけど、葡萄も美味しいんだよ。バーに行くとワイングラスで出してくれるの」
「それ、間違われない?」
「ワイングラスに「ジュース」ってデデーンと書いといてほしいよね」
「…そうだね。…龍、いつもこの子天然?」
「時々ね。そこも可愛い」
「惚気はもう十分だよ」
人通りの増えてきた館内を歩くTRIGGERと。
目立ちまくりである。
そこに若女将と言え自分がこれ以上食い込めるはずもなく、姉は四人をただ見送るのであった。
「とりあえずビール貰おうかな」
「あんまり飲み過ぎないでよね。明日も撮影あるんだから」
「夕飯のとき飲んだワイン美味かったな。俺それにする」
「天何するー?」
「グレープフルーツにしようかな」
「お目が高ーい。私はマンゴーにするっ」
葡萄じゃないんかい。
という三人各々のツッコミは心の奥にしまい込み、それぞれ注文する。
「で、さっきの話何だったんだよ」
「ん?んー…個室行こっか」
さすがに他の客もいる所で話すわけにはいかない。
バーテンに席を移ると告げ、奥に設置された個室へ四人で入る。
飲み物も届き、乾杯すればは飲み物を一口飲んでから口を開く。
「簡単に言えば、私はお父様が外で作った花街の芸妓の子で、母親が早くに亡くなったからここに引き取られたの。だから、お母様とは血がつながってなくて、お姉様とは異母姉妹?って奴なわけですよ」
「…複雑だな?」
「そう?でもこれで、お姉様との微妙なやり取りも納得でしょ?」
きょとんと首を傾げつつも微笑むに、確かに、と楽と天は頷く。