君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第77章 77
「あ、十さん…」
「?あ、のお姉さん…」
そこへ声をかけたのはの姉。
にこりと微笑む彼女に軽く頭を下げ、そのまま去るのもどうなのかと思ってしまった。
「あの子は、ちゃんとやっていますか?」
「はい。どこの現場でもみんなに可愛がられて、楽しそうにやってますよ」
「そうですか…。相変わらず媚ばかり売っているんですね」
「え…?」
「…少し、お話よろしいですか?」
のことについて。
そう言われれば、龍之介は引き下がれない。
人目につきにくい影にあるベンチに案内され、龍之介はそこへ座る。
「十さん、あの子と随分親しいようですけれど…大丈夫ですか?」
「大丈夫、ですけど…」
「あの子、すぐに男の人を引っ掛けようとするんです。色目を使って…私のお付き合いしている人や、お客さんから何かお金のようなものや物品を貰っているんですよ。本当にふしだらな子なんです。だから、あの子がこの家を出て東京へ行ったことは正直ほっとしました。だけど、今日TRIGGERの皆さんと一緒にいる所を見て、皆さんが心配になってしまって…。十さんは特にあの子とよく一緒にいらっしゃるから、もしかして騙されているんじゃないかって…」
姉の言葉に、龍之介は訝し気に眉をしかめる。
金や物を受け取っていた、その引き換えに体を差し出しているとでもいう言いぶりだが、がそんな事をしていない、まっさらな体だったことは何より龍之介が一番知っている。
「ねぇ、十さん。あんな子やめて、私とお付き合いしてくださらない?」
「…は?」
「あの子は17。私は20で歳の頃合いも良いですし、貴方はホテル王の息子、私は老舗旅館の娘。ビジネス的にも将来的にもいいでしょう?」
そう言ってしなだれかかってくるの姉に、龍之介は正直吐き気がした。
けれど、龍之介が拒否を示す前に、肩にかかっていた姉の重みがなくなり、次いでパンッと乾いた、しかも大きな音がした。
「っい…!!」
「お姉様、どういうつもりですか?」
のこんな顔、初めて見た。すっごく可愛い。
状況が呑み込めない中で、龍之介がまず思ったことである。
正直、そんな場合じゃない。