君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第70章 70
「丼…かつ丼はちょっと重すぎるかもだし、親子丼にしようかな卵はあったから、玉ねぎあったっけ?買っとこ。あとはー」
「だ…」
「可愛い…めっちゃ可愛い…」
「声掛けようぜ!」
そんな声が聞こえれば、ゆっくりと近付いてくる気配。
仕方ないか、とそれでも普段通り食材を見ていれば声を掛けられる。
「さん、ですか?」
「あ、はい。こんにちは」
「こんに、ちは!えと、ファンです!」
「応援してくださってありがとうございます!」
正直、休みの日なのにとは思ってしまうが、それでもやはりファンと言ってくれることは嬉しい。
にっこり微笑めば、またも相手を惚けさせてしまう。
「…あ、握手してもらっていいですか?」
「勿論。これからもよろしくお願いします」
男性二人組と握手を交わし、一礼してその場を去る。
「あと何買お…お肉も買ったし、うん。いっかな」
カゴを覗き込み頷けば会計を済ませタクシーに乗り込む。
マンションへ着けば記者の目をくぐりエントランスへと車を付けた。
部屋に戻り荷物を片せば、時間は夕方。
回せるものは乾燥機に任せ、洗濯物を干す。
「先ご飯作って課題やろっと」
が出かけることを見越して、比較的簡単に準備できる丼物をリクエストしてくれたのかもしれない。
そんな龍之介のさりげない気づかいに微笑み、は順調に夕飯の準備を終えた。
「ここ授業やってないよー、わかんないよー、助けて龍くんーー!あ、もうすぐ放送だ」
生放送の番組の時間が近づき、テレビをつける。
ちょうどCMが流れ、は即座にテレビに釘付けだ。
やがて番組が始まり、TRIGGERがオープニングで現れた瞬間、のボルテージは最高潮である。
「かっっっっっこいーーーっ!!」
もう、ただファンである。
ひとしきりキャーキャー言った後、龍之介のアップに眩暈を起こす。
「……かっこよ…最高…死んじゃう…」
胸を押さえ、TRIGGERの出番が終わったことではテレビはそのままに課題を再開する。
その時スマホが鳴り、龍之介からラビチャが届いていた。
『出番終わったよ。は家帰ってる?』
『お疲れ様!すっごくカッコ良かったよ!家にいるから、安心してね』