君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第70章 70
「じゃあ、行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
翌日の昼。
遅めの朝食兼早めの昼食をとって、龍之介は仕事へと向かうために玄関へ向かう。
「晩ご飯何食べたい?」
「そうだなぁ…生放送の後だし、丼系食べたいな」
「おっけ。準備しとくね」
龍之介の言葉にこくりと頷き、は軽く背伸びし龍之介の頬に口付ける。
「こっちがいいよ」
「ん…っ、へへ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
二度目の口付けを交わし、龍之介が玄関を出ていく。
それを見送り、寂しげな表情を浮かべながら洗濯機を回し、自らも出かける準備を始める。
「一人だとお洒落する気は失せるんだけど。十龍之介の彼女の癖にジャージかよとか後々言われたくないしなぁ」
世間体とは大変なものである。
等と一人唸りながらそれなりに出かけても支障ない服へと着替え、軽くメイクを施す。
準備を整えれば、鏡でチェックし、家を出る。
「いい天気でーすねー」
とはいえ、徒歩でマンションを出るのはまだ少々危険なため、タクシーをエントランスに呼び乗り込む。
ほどなくして行き先を告げた店の前に到着し料金を払う。
「ありがとうございました」
「あの、娘がファンでして…サイン頂いても良いですかね」
「勿論。娘さんのお名前聞いてよろしいですか?」
言われるままにサインを書き、嬉しそうな運転手に微笑みタクシーを降りる。
そのまま店に入れば、の目はきらきらと輝く。
「どんなのがいいかなぁ…龍くんコーヒーだからやっぱマグカップだよね。とはいえあんまり大きいの飲み切れないし…」
呟きながらああでもないこうでもないと品物を選んでいく。
「これかなぁ…次お茶碗。あ、丼も買おー」
様々な二人分の食器を購入し、ほくほくとした表情で店を出る。
「晩ご飯の買い出しして、いや先におやつ買ってこ」
タクシーを拾うか歩くか一瞬悩み、歩くことを選択。
街中なのだから、龍之介との仲を怪しまれる要素はない。
ただが一人で買い物を楽しんでいるだけだ。
マンションへ帰るときにスーパーから乗って帰ればいいだろうと頷き、お気に入りの洋菓子店へ寄ってからスーパーへ向かった。