君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第67章 67
現在は、引く手数多の超売れっ子女優だ。
仕事の頻度を下げるとは言ったものの、やはり細々とした仕事はあれからも少しずつ入って、スケジュールは埋まってきている。
週一でもぎりぎり守れるか微妙なラインでもある。
「お待たせ!」
「では出発しましょう」
「行ってきまーす!」
紡の運転する車に乗り込み、はシートベルトを付ける。
「お、早い。トラックもう着いたって」
「十さんは今日いらっしゃるんですか?」
「うん。昼まで空いてるから、荷物ある程度片しといてくれるって」
「今日の送りは十さんのマンションですよね」
「うん、お願いします」
とんとん拍子に同棲が決まり、自身もまだ追い付いていない部分もあるが、龍之介との暮らしに不安はない。
とはいえ、これからも密な話し合いは必要なのだろうなと考えていればスタジオへと到着した。
「おはようございます」
「おはようございます、さん!今日も一番乗りですね!」
「新人ですから、数分でも先輩方をお待たせするわけにいきません」
出迎えてくれたスタッフににこりと微笑み、は楽屋へ向かう。
家族物のドラマではあるのだが、夫婦に視点を置いている作品の為自身の出番は少ない。
とはいえ、自分の役を起点に話が進む構成でもあるため、生半可な演技は許されていなかった。
幸い、ほんの少しのNGが出る程度で大きなお叱りを受けることなく撮影を勧められているから、今日も大幅な予定オーバーをすることなく撮影を終えることが出来そうである。
出演俳優たちにも気に入って貰えているのか、良く気遣ってもらい、可愛がって貰っている。
「ちゃん、ちょっといい?」
今日も順調に撮影が終わろうとしている頃。
監督に呼ばれは紡と共にそちらへ向かう。
「どうしました?」
「再来週放送の回で、ゲストが出ることになってたんだけど」
「はい。ゲストの方はまだ出演者皆さんご存じないんですよね」
「と言ってられる状況じゃなくなっちゃって。予定してたゲストっていうのが、鳳君だったんだよ」
「あー、なるほど。…うちの事務所NG出してましたっけ?」
「はい…。今回の報道で社長がご立腹で」
紡の答えには頷き監督を見る。