君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第67章 67
同棲許可を得てから数日後。
小鳥遊事務所の寮の前に小さなほろ付きトラック。
およそ人気女優の引っ越しとは誰も思わないかもしれない。
「荷物これだけ?」
「うん。ちょっとずつ荷物運んでたし、向こうにもう色々揃ってるから、ベッドとか棚とか、次に入る子に残しとくと便利かなって思って」
上京するときに購入したものばかりの家具たちは、まだ半年程度しか使われておらず傷はないし汚れは少ない。
更にがシンプルなものを好むため、性別や好みにとらわれることなく次の入居者も使いやすいだろう。
龍之介の部屋もその広さ故に収納などが持て余されており、の荷物を運び入れても未だ余裕がありそうだったために、棚などを持ち込む必要もないのだ。
「ベッドも?」
「うん。龍くんちのキングサイズだもん。掛け布団も追加で買ってあるし」
一緒に寝るんだぁ…、と陸が軽く想像し頬を染める中、がっちょがっちょと段ボールを運んでくる環。
の引っ越しに最後まで駄々をこねていたが、が週一で顔を出すという提案に渋々と頷いてくれ、今日に至っては積極的に手伝ってくれる。
「っちー。TRIGGERグッズ持ってきたぞー」
「ありがとー!」
「TRIGGERの一人と暮らすのにグッズいるか?」
「いるね。必需品だね」
「必需ではないだろ…」
そんな大和からのツッコミを受けながら荷物を運び終え、助手席に乗り込むのは万理。
引っ越し業者の運転手が些か残念そうな表情だったのは秘密だ。
「じゃ、運び込んどくね」
「ありがとうございます、万理さん。お任せしてすみません」
「大丈夫大丈夫。は仕事頑張って」
「はーい」
この後は仕事。
ドラマの撮影と、CMの打ち合わせである。
この日はIDOLiSH7はオフの為、紡が着いてきてくれるそうだ。
「じゃあちゃん、行きましょうか」
「うん、カバンとってきまーす」
パタパタと寮に戻るを見送り、一同感慨深げに息をつく。
「妹が嫁に行く気分」
「俺は娘が嫁に行く気分」
「華がなくなるなぁ…」
「でもっち週三で顔出すって言ってたし」
「四葉さんが勝手に週三って言ってただけで、週一で最後は納得してたでしょ。さんにそんな暇ありませんよ」