君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第25章 25
「もしもーし、だよ」
『お、。お疲れ』
「お疲れ様。三月くん、どうしたの?」
『いや、今日帰りって聞いてたけどこんな時間だからさ?みんな心配だーっつってるから』
だからかけてみたと話す三月に、は一度謝る。
「ごめん三月くん。連絡し忘れちゃってた。まだ東京戻ってないんだ」
『え?そうなのか!この時間にまだそっちってことは、泊まり?』
「うん。明日の昼くらいには寮帰れると思うんだけど…ご飯準備してくれてた?」
『いや、俺たちも今まで仕事だったからそこは大丈夫』
東京に居ないよう言っておくのは、万理からのアドバイスである。
「良かった」
『じゃあ帰りは明日な。帰り、気を付けるんだぞ』
「うん」
「……ちゃん、あ、ごめん。電話中だった?」
注文を終えたことを伝えに来てくれたのだろう龍之介が、がちゃりと扉を開き、はとっさに人差し指を口元に当てて微笑んだ。
「十さん!スタッフさん呼んでますか?」
「うん、みんな待ってる」
「すぐ行きます!じゃあ三月くん、また明日!」
『十さんも一緒なら安心だな!』
「うん、ありがとう三月くん。またね」
『おう、お疲れー』
「お疲れ様!じゃあ…」
通話を切り、ほっと安堵の息をつき、それからはくすくすと笑いだす。
「ごめん、電話してたの忘れてた」
「大丈夫。注文できた?」
「うん、三十分くらいで着くよ」
龍之介に近づき、礼と共に口付ける。
そっと口付けを返されれば、二人で手を繋ぎリビングへと戻った。
「テレビでも付ける?」
「うん。あ、今日陸と一織が出る番組やるはず…時間ももうすぐ」
「そうなんだ。見てみよっか」
の言葉に龍之介がテレビを付ければ、丁度番組切り替え時のCMが流れているところだった。
二人並んでみていれば、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「あ、俺たちのドラマ」
「………なんか…照れる…」
放送日が近づき、CMの回数が増えてきたとは聞いていた。
しかし、は撮影に集中したいからと、敢えてテレビは見ていなかったのである。