君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第225章 225
「……めちゃくちゃ悩む選択肢じゃないですか」
唸りながら頬杖を突き首を傾げていれば、注文した料理が届く。
店員に礼を伝えれば、そのままはまた頬杖に戻ってしまった。
これがのいい所であり、悪い所である。
仕事に対しての情熱があるのは良いことだが、それに伴うと寝食を忘れてしまうのがネックである。
万理はの顔の前で軽く掌を振り、を思考から脱却させた。
「ライブの話はあと。先食べよう」
「あ、はい!」
頷くを見て、万理はおしぼりを手渡し、の様子を見る。
食事を抜きがちながきちんと食べる様子を見届けるのもマネージャーの仕事の内である。
「いただきまーす」
「いただきます」
2人で手を合わせ食べ始めれば、ようやく辺りを見回す余裕が出たのか、が周りに視線を向けた。
「今日みんな何時くらいに帰ってくるの?」
「5時に東京駅なんで…多分6時くらいです」
「そっか、じゃあ買い物まで付き合ってから俺は帰ろうかな」
「そこまで付き合わせるのは申し訳ないですよー」
「俺もまだ、を1人にするのは怖いんだよ」
「…ありがとうございます」
至る所に、まだ事件の尾が引かれている。
万理はの戻った姿しか見ていないが、その姿も痛々しいものだった。
今でこそ傷もなく痕も綺麗さっぱり消えているが、あの姿は中々忘れられるものでは無いし、事件の第一報を聞かされた時のあの胸の締め付けられ具合は、今までに感じたことがないほど苦しいものだったことも忘れられない。
「そういえばGPSは?」
「スマホの位置情報共有ってことで落ち着きました。スマホ失くした時も役立ちますし」
「なるほど、その手があったか」
「はい。万理さんにも共有しますか?」
「うーん、俺は良いかな。さすがにプライベートに踏み込み過ぎるのもね」
くすくす笑う万理に、それもそうかと頷く。
「万理さんになら良いんですけどね、見られても」
「…そう?」
「それで安心してもらえるなら」
「……そんな可愛い事言わないで…ほんと頼むから」
「今のとこ可愛いとこありました?」
何が突然人のツボにはまるか分からないものである。
顔を覆って呟く万理に、は苦笑しながら食事をポリポリ。