君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第213章 213
いつだったか、女優であるを好きなだけだと言ったことがある。
それが、なぜこんな気持ちになってしまったのか。
もしかしたら、あれは言い訳でしかなくて、今の気持ちが元からあったものなのかもしれない。
そんなことを思いながら、大人のお子様ランチというぜいたくなプレートに瞳を輝かせるを見る。
「お子様ランチ…ふ、お子様」
「大人のってついてるじゃないですか!」
「まだは子供。…頼むから、もう少しだけ子供でいて欲しいよ、俺は」
そうしたら、きっと、この気持ちをいつか封じ込められる気がするから。
だからまだ、大人になって俺の手の届くところへ来ないで。
「?…じゃあ、万理さんには遠慮なく甘えます」
「うん、大いに甘えて。でも、厳しくしなきゃいけない時は厳しくいくよ?」
「はい!これからも、宜しくお願いします!万理さん」
「うん、任せて」
にこりと微笑み、冷めないうちに食べよう、と手を合わせて食べ始める。
「おーいしーぃ。疲れた体に染み渡る…」
「子供って言ったけど、大人並みに働いてるもんね。最近無理してない?」
「はい。大丈夫です!龍くんたちもサポートしてくれるし、万理さんがいてくれるから」
「……………」
「万理さん?」
「本当に…には参る」
「え?」
「可愛すぎ」
龍之介がいない時にこんな事を言うなんて、卑怯でしかない。
けれど、に焦がれる他の男たちが、何をしてでもを手に入れたいと願う気持ちを、万理は今、嫌という程理解してしまった。
可愛いと伝え、素直に、嬉しそうに、照れ臭そうに微笑むに、つい手を伸ばしそうになる。
「…」
「はい!」
「もう、あんまり可愛いとこ見せないで…今日だけで良いから」
「……はい、でも万理さん」
「ん?」
「万理さんに可愛いって言ってもらえるの、嬉しいです」
「~~だから…もぉ…ユキとタイプ一緒なんて聞いてないんだって」
「んー…お二方の好みは似てると思いますけど」
「そんなのやだ」
「そんなわがまま言わないで下さいよぉ」
くすくす笑うに小さく唸り、咳払いして食事の続きを促す。
「ホントに、君には敵わない」
そんな呟きを最後に、何とか普段通りの会話へと戻っていくと万理であった。