第6章 三ツ谷隆くんに愛されたい②
「そんなに息切らして、どうしたの?」
「はぁっ…はぁっ…これ。新しい追加の企画書です。今日の会議に」
「うん。分かった。大丈夫?」
「はぁっ…はぁっ…大丈夫ですっ!」
全力疾走してきた後輩から、資料を預かる。
見出しには『三ツ谷隆コラボ企画』と書いてあった。
えっ?
三ツ谷隆って、あの三ツ谷隆?
じゃあ彼女たちが言ってたのは、彼のことだったの?
呆然としていると、肩をトンッと叩かれた。
「ヤリ逃げ姫じゃん。久しぶり」
「えっ?あっ…ああっ!」
そこには本物の三ツ谷隆がいた。
反射的に数歩後ずさる。
「し、失礼します!」
「あっ、ちょっ!待てっ!」
デジャブ。
彼を残して、私はエレベーターに飛び乗った。
まさか会社で会うなんて。
しかもヤリ逃げ姫って…
もしかして怒ってる?
あんなこと言いふらされたらどうしよう。
会社で変な噂がたっちゃうよ。
なんとか彼と接触して、口止めしなきゃ。
ああ、もうっ!
私のバカー!
頭を抱えずにはいられなかった。