第5章 三ツ谷隆くんに愛されたい①
「ねえ?お姉さん一人なの?」
「んん?」
肩を叩かれて、振り向く。
頭が軽そうな男。
“ちっ”と舌打ちをしたくなる。
酔いが回って状態の私に絡むなんて、いい度胸じゃないか。
「何か用?」
男を睨みつける。
「一杯奢らせてよ」
「結構です」
「店長。アレ頂戴」
「畏まりました」
店長にスッとお酒を出される。
別にいらないのに。
何なのよ。
「これ飲めばどこか行ってくれる?」
「ははっ!いいよ!」
何が面白いのか、男は笑った。
私は一人で飲みたい気分なのに。
これを飲めば構わないでいてくれるという男。
それなら、飲んであげるよ。
私はお酒をぐいっと飲みほした。
「これで満足?」
「うん。じゃあ行こうか?」
「はっ?」
意味分かんない。
放っておいてくれんじゃないの?
文句を言おうとした瞬間、空間がぐにゃりと歪んだ。
「あれっ?」
男に凭れ掛かってしまう。