第5章 三ツ谷隆くんに愛されたい①
仕事中。
昨日のことを思い返す。
そもそもの事の発端は、好意を寄せていた上司に振られた事だった。
「もし勘違いさせてたら悪いんだけど、苗字さんのことは良い部下とかしか思ってないんだ」
「…そう…だったんですか…」
よく食事に誘われるから、私のこと好きなんじゃないかと勘違いしてしまう。
「正直言うと…僕は女性に興味がないんだ」
「へっ?」
それって…
ゲイってこと?
「苗字さんになら理解してもらえると思ったんだ。君と食事をしていれば、会社でも妙な噂が立たないと思って。本当にすまない」
「いえいえ!そういう事情があったんですね!私は大丈夫ですよ!言い触らしたりしませんし!寧ろいつもご馳走になって悪いなーって!もし良かったら、また誘って下さい!では、おやすみなさい!」
混乱して、捲し立てるように一方的に話して逃げてしまう。
まさかの事態だ。
飲まなきゃやってられない。
適当なバーに入って、お酒を浴びるように飲みまくった。