第4章 三途春千夜くんに愛されたい
黒塗りのベンツに乗せられ、走行中の車の中。
私を拉致した男にジロジロと見られる。
「お前。名前は?」
「………苗字…名前です…」
「ふーん。名前ね。俺は春千夜。好きに呼んでいいよ」
名前なんて知りたくないし。
犯罪の片棒も担ぎたくない。
終始、不気味な笑顔を向ける春千夜と名乗る男。
私これからどうなっちゃうんだろう?
この人に殺されるのかな?
口封じとかで。
「着いた。ほら。降るよー」
「えっ?」
連れてこられたのは綺麗なオフィスビル。
入口には怖い人たちが列をなしていた。
「「「お疲れ様ですっ!」」」
「ひぃっ!」
「あー。そういうのいいから。可愛い子猫ちゃん捕まえたからビビちゃっうでしょ」
スタスタと進んでしまう春千代さん。
えっ?
ここ突っ切るの?
足がすくんで歩けないでいると、ひょいっと抱き上げられてしまう。
「ごめんね。怖かったよね。でも俺がいるから大丈夫だよー」
「は…はいっ…」
この人はヤクザが何かなのだろうか?
春千夜さんに抱えられながら、ビルの中へ連れ込まれた。