第5章 傷
──浮竹十四郎──
水月を見送って数日後の朝一番に耳に入った出来事。
「十三番隊隊長補佐氷室水月が負傷。現在、四番隊にて治療中」
直ぐに重い身体が動いた。
今回は流魂街の見廻り兼虚の討伐だったよな。瀞霊廷に近い地区だからいつもなら普通に帰ってくるはずなのに。何があったんだ?
四番隊へ入ると一つの病室へ通された。中には卯ノ花隊長とベッドに寝ている水月がいた。
「先程、治療が終わりました」
片付けをしながら言う卯ノ花隊長。
「肩から腹部にかけて大きな傷がありました。腕や顔はかすり傷だけ。おそらく虚にやられたのでしょう」
顔には小さな複数の傷。衣から出ている腕には包帯。衿元から見える首周辺の肌は包帯で見えないが赤いモノが薄っすらと見える。
「夜、瀞霊廷内を見廻りをしていた隊員が発見したそうです。意識なく座り込んでいた、と。ここに運ばれたときは、やられてからそれなりに時間が経っていました」
魄動がかなり弱い。胸の上下の動きもほとんどしていない。
そういえば白雉はどうしたんだ?いつもなら回復系の斬魄刀である程度は治しているのに。部屋を見渡して見つけたのはベッド脇に立て掛けられている打刀の白狼。
「斬魄刀は白狼しかありません。今回、白雉は置いて行ったのでしょう」
瀞霊廷に近い地区だから危険性は低いと判断したから白雉を持って行かなかったらしい。確かに今回の主な目的は流魂街の見廻り。虚討伐はついで。
水月がここまで負傷するのはいつ以来だろうか?水月は強い。斬拳走鬼の中で鬼は苦手とするものの、斬拳走はかなりのものだ。統学院の頃から見ているから分かる。
「白雉を連れてきます」
生死を彷徨う状態だ。四番隊の力にも限界はある。白雉の力を借りるのが一番良い。
「それが良いでしょう」
卯ノ花隊長は病室を出て行った。
もう一度、水月を見ると白雉を連れてくるため病室を出る。
水月の自室へ向かっている最中、地獄蝶が飛んできた。何事かと指にとめる。
「氷室水月が四番隊より失踪。現在捜索中」