第3章 ある時の八番隊
水月ちゃんは白狼を小突く。ボクも痛かったけど白狼も痛そう。拗ねたのか丸くなってるよ。
すると七緒ちゃんがお茶一式を持ってきた。初めて具象化した白狼を見るのかなんとなく頬が緩んでいる感じがする。お茶を用意してお土産の箱を開けてもらうと鳥の雛を象ったお饅頭だった。最近の現世で人気らしい。
それからは最近の現世の話しを聞いた。なんでも大きな大会があったみたい。いろんな人が集まっていろんな競技で競っていたとか。
お茶がなくなる頃、もう戻ろうとする水月ちゃんに近々出版予定のボクの写真集を見せる。最初から最後まで決まっているでしょう?
一枚一枚、目を通していく水月ちゃんの表情が変わっていく。「この感じは、」と思ったら物凄い勢いで写真集が顔に飛んできた。そのまま後ろに倒れると水月ちゃんは七緒ちゃんにお土産とは別の箱を渡し「失礼する」と出て行こうとする。
「水月ちゃん、誰でもいいから後で傷見てもらうんだよ」
部屋から出る既の事で言うと、写真集を見たときとは違う表情をしているのが一瞬、見えた。水月ちゃんにとって都合の悪い事を指摘すると顔を歪めるのは昔から変わらない。
「七緒ちゃん、後でもいいから、四番隊に連絡しておいてくれる?できれば卯ノ花隊長に」
こうでもしないと傷をあのまま放置するだろう。気付かれないようにしてたみたいだけど、斬魄刀を手で持ち歩いてるし、動作もどことなく変だった。
自分の身体くらい、大切にしてほしいよね。
後で七緒ちゃんに見せてもらった箱の中身は現世の老舗の羊羹だった。