第3章 事件3.刑事2人恋の始まり
「心配しなくても大丈夫です。あなたを疑っているとかそういうのではないので」
「そう、ですか…」
そう言われても何となく気分が良いものではないなと思いながら、探知機を手にした風見の前で両手を軽く広げ、どうぞ、と身体を差し出した
前も後ろも頭から足先まで動かされた風見が手に持つ探知機はもちろん反応を示すことはなく、カナはホッと小さく息を吐いた
「これでやっと本題に入れます」
カナだけでなく風見もまたホッと小さな息を吐き出しながら探知機を机に置き、椅子に座った
そしてカナもテーブルを挟んで対面になる様に椅子に座ると、テーブルに積み重ねられた事件の資料を目の前に先に話し出した
「あの…小森財閥関係の資料を持って来られたということはそれに関わる話ですよね?昨日も言いましたけど、私はまだその事件に深く関わっていないので力になれることは何もなくて…」
「そのことですが…」
風見は資料と一緒に持ってきたタブレットを操作し、ある画面を表示させるとそれをカナへと見せた
「2週間後に行われる小森財閥のパーティ参加者名簿です」
そう言われて上から順に目を通すと、そこには生まれた時から共にしている見慣れた名前が記載されている
「祖父と…私の名前!?なんで!?」
“星宮宗一郎”、“星宮カナ”
自分の名前が同姓同名であったとしても祖父までも同姓同名というのは確率的には低い
この名前が連なって書かれいるということはほぼ自分で間違いないだろうと驚きを隠せなかった
「やはり何も知りませんでしたか」
驚いている姿から参加することを知らなかったというのは嘘ではなさそうだと風見は確信した
「ここに記載されてるということは、祖父と私で参加することになっているんですね…?」
「我々もそれを聞きたくてあなたを呼んだのです」
どういう事なのかさっぱりわからないカナは更に最悪な状況が脳裏を過ぎる
「もしかして…今回の事件に関わっているかもしれない人物が参加者の中にいて、私や祖父も疑われていたりするのでしょうか…」
もちろん自分は何の関わりもないが、参加者名簿に名前がある限りはその可能性もあるという前提で捜査されるのを、刑事であるカナは理解していた