第3章 事件3.刑事2人恋の始まり
エレベーターを降りると風見から小会議室で待つように指示される
その指示も丁寧で、エレベーターを降りた所にあるフロア案内図を指差しながら教えてくれた
きっと風見は細かい所まで行き届いた仕事をする人なのだろう、でなければ公安部で仕事なんてできない、と思いながらカナは指示通り廊下を進んだ
そして目的の小会議室へと入室し、風見が来るまでの間座っている訳にもいかないと思い窓際から外を眺めた
庁舎前の公園は普段6階から目にする景色よりも小さく見える
「(仕事の話ってなんだろう…)」
公園内を行き交う人々を細い目で追いながら考えた
先日の水難事故の件かな…
それとも風見さん、私のせいで上の人に何か言われたとか…?
もしかして、公安の仕事に支障が出て私も風見さんも警察辞めなきゃいけなくなったとか…?
考えれば考える程悪い内容しか出てこず、表情は暗くなるばかりだった
早く話を聞きたいという気持ちから部屋の入口に目を向けるが、風見はまだ入って来ない様子
しんとした雰囲気が更に不安を煽ってくる
そんな部屋の冷たさを紛らわそうとカナは部屋のドアを開け、もと来た廊下の先を覗いた
すると風見は既に部屋の近くまで来ていて、腕には昨日カナが運んだ小森財閥に関する資料を抱えている
それを見てその事件に関することだとすぐに悟ったカナは「なんで私にその事件の話を?」と思ったが、それよりもまず下っ端である自分が動かなければと部屋のドアを固定し風見に駆け寄った
「資料運びます!」
「いや、このくらい大丈夫だ」
「でも…」
「では自分が部屋に入ったらドアを閉めるのをお願いしても?」
そんなこと自分が資料を持ちながらすれば良いと思ったが、そうお願いされてしまっては断ることなんてできない
歩き出した風見の後をついて行き、後に入ったカナはパタンと扉を閉めた
室内に振り返ると風見は既に机に資料を置いていて、リモコンの様な黒い機械を手にしている
「探知機…ですか?」
カナはそれが何か知っていた
「ええ、万が一の為に盗聴器の類いを調べさせてもらってから話を始めます」
ここで発信機や盗聴器などを探す為の道具が出てきたことでこれから話す内容の重大さがわかったが、何故自分が呼ばれたのかだけはまだわからず、カナは不安な顔を送ってしまう