第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
風見はニッコリ微笑んだカナを目の前に、細めていた目を丸くする
元気がなかったと聞いていたが、目の前で笑う彼女は、既に今回の事態を飲み込み、それに相応しい態度で、そして自分がどうすべきか納得して動いている
彼女は強い…きっとその根本にあるのは、自分の業務に迷惑が掛からないようにという気遣いや優しさだろう
自分も…腹を括るしかないな……
風見はカナの差し出す紙袋を受け取る
「星宮さ…」
「忙しい時間に本当にすいませんでしたっ!登庁時間もありますのでこれで失礼します!!」
紙袋が風見に渡り話し掛けられそうになった時、カナは再び頭を下げ、勢い良く別れを告げて風見に背を向け歩き出した
「ちょ、ちょっと待ってください!」
カナの足が2,3歩進んだ時、風見は腕を掴んで引き止めた
もちろんカナは振り返り、驚きの表情を見せる
「あなたはズルい人だ……自分の想いだけ告げて、話も聞かずに行ってしまう…」
昨日だってそうだったと言う風見に心当たりがあるカナは、すいませんと言いながら向かい合って俯いた
もう最後まで話を聞いてくれると判断した風見は掴んだ腕を離し、早速自分の話を聞いてもらおうとした
しかしこんな玄関の前ではなく登庁後に呼び出して今日こそは会議室でゆっくり話そうとしていた為、上手く言葉が選べずにいた
そうだ、とりあえずこのまま庁舎に同行してもらって話をしよう…
「星宮さん、突然で申し訳ないが、付き合って欲しい」
仕事中の態度へと切り替え出てきた言葉は誤解をされてしまう様な言葉で、え…?と固まるカナの様子にハッと気が付く
「あっ!違う!そういう意味ではなく!仕事の話がしたいので今から庁舎まで付き合って欲しいという意味で…!」
「そ、そうですよね!仕事、仕事…」
何を誤解してるんだと恥ずかしがるカナの頬はほんのり紅く、やってしまったと額に手を当て後悔する風見の頬も紅く染まる
カナは服を返す事ができたら風見と会う事はなくなり飛田の事をそのまま忘れるだろうと思っていたが、胸のドキドキはまだ続きそうで、
風見はこれから始まる私情と隣り合わせな案件にどう対応すべきか落ち着かずにいた
二人の恋の迷いは、まだまだ続く…
END