第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
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次の日、カナは朝早くから風見の家の前でインターホンを見つめながら立ち往生していた
手には紙袋が2つ、1つは一昨日借りた服が入っていて、もう1つはお礼にと用意したお菓子が入っている
昨夜は飛田の事をなかったことにしようと割り切ろうとしたが、その前に服だけは返さなければと登庁前にここへ立ち寄ったのである
だが、登庁前の朝だからもしかしたら風見は朝の支度に忙しくしているかもしれないし、何かの案件で帰宅していないかもしれない
玄関の取っ手に引っ掛けておいたら不審物扱いとなってしまうだろうか
それに直射日光にはなっていないがお菓子をそのまま外に放置するのも心配である
登庁後に公安フロアを訪れて渡すことも考えたが、私用で行くのは良くないだろうし、他の人もいるから絶対にできない
だからと思って朝一でここへと立ち寄ったが、その先一歩がなかなか踏み出せないでいる
「(ピンポンして出てこなかったら借りた服だけ置いて出勤しよ…)」
ようやく意を決してインターホンへと指を伸ばした時
家の中からバタバタと足音が聞こえ、勢いよく玄関が開くのと同時に慌てた風見が姿を現した
「きゃっ!」
「え?えっ!?星宮さん!?」
風見は朝ご飯を調達する為のコンビニへ寄る時間がなくなりそうだと、スーツのジャケットとネクタイと鞄を片手にまとめて早足に玄関を出たのだ
だがその急ぎ足も突然のカナの登場に止めることとなり、開いた口が塞がらないまま硬直してしまう
「い、忙しい時間にすいませんっ!」
カナは飛び出して来た風見に驚きはしたが、すぐに風見に向かって頭を下げ、手に持っていた紙袋を突き出した
それから目をぎゅっと瞑って昨晩から考えていた事を伝え始める
「一昨日お借りした服です、ありがとうございました!飛田さんのことは忘れなきゃと思ったんですけど、その前にこれだけはお返ししなければと思って来てしまいました。受け取って頂けたら一昨日のことは綺麗さっぱり忘れます。ここへ来ることもしませんし、色々知ってしまった事も他言しません。あと、こうやってお話するのは最後になるかもしれないので、これだけは言わせてください…!」
勢いよく顔を上げたカナに、風見は目を細め息を飲んだ
「…飛田さん、ありがとうございました!!」