第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
降谷の話ではポアロで“飛田”という名が出ただけで、それが公安刑事の風見という事は表に出てこなかったらしい
更に周りから質問責めにあってしまってもカナは話を避けるのに必死で、安室の助手と同じ名前だと言われても人違いだと押し通していたそうだ
少しでも疑ってしまった事を申し訳ないと思う風見だが、カナが公安へ赴いた後から元気がないと一緒に来ていた佐藤と高木が心配をしていたということを聞いて
「(星宮刑事が元気をなくしたのは自分のせいだ…)」
と、更に自己嫌悪になり目を伏せる
「いつも明るい彼女が参った様な顔をしていたよ。まぁ君の事だ、お互い何も知らずに出会い、庁舎内で再会、偽名を使っていた君は昨日の事は忘れて欲しいとでも言ったんじゃないのか?」
どこまでも図星をついてくるこの上司に恐ろしさを感じながら、風見は自分の失態に頭を下げた
「申し訳ありません…いくら同じ警察官だといえ、こんな簡単に自分の偽名がバレてしまうだなんて…」
公安刑事として有るまじきことだと肩を落とす風見に、降谷は腕を組みながら溜め息をひとつ零した
「それでよく公安が務まるな…」
返す言葉もないと風見は俯く
「と言いたい所だが、お陰で今回の案件、上手く事を運べそうだ」
「……?」
自分が失態をしたことで上手くいくというのはどういう事なんだと顔を上げると、ニヤりとよろしくなさそうな笑みを浮かべている降谷と目が合い、なんとなく身構えてしまった
「えっと…それはどういう事でしょう…?」
「さっきから言っているだろ。そのリストに君のよく知る人物がいるんじゃないかって」
降谷が差した指先に促されてパソコンの画面に目を向けハッとする
「ちょっと待ってください!この“星宮カナ”というのはやはり一課の星宮刑事なんですか!?」
「なんだ別人だと思ったのか?」
君が偽名を使っているよりもハッキリと本人の名前が出ているだろうと言われ、うぐ…と奥歯を噛んだ
「君が彼女と接触してくれていて助かったよ。それに案外星宮さんのことを気に入っているみたいだしね」
「じっ、自分はそんなっ!!」
「僕も刑事として星宮さんのことは気に入っているんだ」
顔を赤らめて否定した風見だが、なんだそういうことか…と焦った自分を恥ずかしがった