第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
「水難事故…」
ボソッと呟くように降谷が言ったその言葉に、風見は驚き反応を見せた
「昨日、提無津川に男児が転落し流された所を男女2人が救助にあたり、聴取も受けずにその場を立ち去ったそうだ」
気まずくなった風見は眼鏡をクイッと上げ直すと、降谷から表情を読まれないようにとパソコンの画面へと視線を逃がした
「幸い男児も救助にあたった男女も無事だったから良かったが、水に飛び込むのはあくまでも最終手段…まったく無茶をしてくれる…」
あの状況を知らないであろう上司がやれやれといった感じに言った事に、なぜだか言い返したくなった
あの時のカナは危険を承知で、でも決して無理をしようとはしなかった事を知っている風見は我慢できず、カナを庇う言葉が出てくる
「レスキューを待っていられない状況で、レスキューが来るまでの間、男の子を支えるだけでもと飛び込んだのではないかと思いますが…」
風見の返事に「ほぉー」と返す降谷
ハッとした風見はというと、慌てて誤魔化す様に自分ならそうしたかもしれません、と更に目を降谷から背けた
「詳しそうだな」
「現場が近所だったので小耳に挟んだだけです…」
あくまでも自分ではない事を通そうとしたが、見透かしているかの様に何に対しても自信満々な態度で話し掛けてくる上司に、
「僕はてっきり君と一課の刑事が対応したんだと思っていたんだがね…」
と言われてしまい、この人は全てを知っていると降参する風見だった
「ご存知だったんですね」
「いや、僕こそ小耳に挟んで気になったから調べてみただけさ」
知っていたなら遠回しをせずに言って欲しかったというのは心の中にしまい、一応自分の事なので話が独り歩きしていないか確認する為にどこで小耳に挟んだのかを聞いた
降谷が言うには、偽名で働いているポアロに一課の3人が来てその時に話題に出たとのこと
「(星宮刑事なら口に出さないと思っていたが、自分の見込み違いだったのか…)」
心がチクりと痛ん風見だが、やはりあの口止めだけではそんなもんか…と今後の対応を相談しようとすると、降谷から思わぬ言葉が飛んでくる
「…彼女はすごいよ。何を聞かれても君の名前を言おうとはしなかったし、詳しい話を求められてもその話はお終いだと一点張りだった……まるで君の存在を隠そうとしている様でね」
「えっ…」