第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
「でしたら早急に…」
「いや、それが誰かというのはまだ特定できていないんだ」
「……?降谷さんの掴んだ情報を、可能な範囲で聞かせてもらえますか?」
そのつもりだ、と降谷は話し始める
まず今回の小森財閥秘書夫婦失踪事件というのは、失踪事件ではなく殺人事件である
取締役が例の組織の研究所へ多額の資金援助をしていたのを、ある時秘書が疑問に思ってしまったのが始まりだろう
資金援助は初めこそ他の企業と同じようにしていたが、日に日に額も上がり頻度も多くおかしいと思った
秘書は取締役に疑問を投げかけるも相手にしてもらえなかったんだろう…だから自分で資金援助をしている研究所のことを調べ始めた
どこまで辿り着いたかはわからないが、秘書がコソコソと嗅ぎ回っているのを知った組織は口封じの為に秘書を夫婦ごと消した…
「そこまでわかっているのになぜ特定できていないんです?」
「僕はその取り引きに関わっていないからね。組織の人間が愚痴を零しながら言った情報なんだ、あまり詮索をし過ぎると怪しまれてしまう」
その愚痴とは、秘書夫婦を消した組織の工作員が後始末を完璧にこなせず警察の目が向いてしまいその尻拭いをしなければならないという内容だったらしい
「後始末を失敗した工作員は別の工作員によって始末される予定だ。そのパーティー中にね…」
パーティーの参加者に今回の事件の犯人がいて、更にまた殺人犯が生まれようとしている…
ギリギリまで泳がせて両者とも確保をしたいといったところだろうか
「取締役も組織の人間だったりするのでしょうか…」
「いや、今回秘書が組織を調べ始めたことで取締役にも組織から疑いの目が向いているから利用されているだけだろう。本来なら保護すべき対象でもあるんだが…」
今ここで保護してしまってはパーティーも開催されなくなってしまうし、取締役も気が強いタイプでなかなか警察側の要件を飲んでくれない人らしい
苦笑いを浮かべる降谷につられて風見もハァ…と苦笑う
「もっと厄介なことに、そのパーティーの会場内には招待客しか入れず、警察は入れない」
「え!?そんな無茶苦茶な…!」
何か取り引きが行われてそうな怪しいパーティーだろ?と降谷はパソコンの画面を自分に寄せてもう一度パーティーの参加者名簿を映し出した