第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
「小森財閥が毎年主催しているパーティーの参加者リストだ。毎年このパーティーには傘下の会長や資金援助をしている企業、取締役のご友人が参加している」
一通り目を通してくれとパソコンを預けられた風見は今年のパーティーの参加者リストを上から順に頭に叩き込んでいった
今日はもう仕事が頭に入らないと思っていたばかりだったが、いざ仕事が舞い込んで来れば働き始まる脳に、すっかり仕事人間になってしまったと恐ろしささえ感じた
リストには事件の資料でも見たばかりの名前がズラりと並んでいるので、新しく覚える名前は招待枠の会社や取締役の友人の名前だけだった
取締役は年配の方で、友人の名前からも年配揃いなことが伺えたが、連名で若そうな名前も載っている
娘や息子なのだろうか、だいぶ幅広く招待するんだなと思っていた風見はふと目に止まった名前に眉をしかめた
「(いや、まさかな…)」
“星宮宗一郎”という名前の下に、連名で“星宮カナ”と書いてある
絶賛悩みの種であるカナと同姓同名な名前に一瞬見間違えなのではないかと、眼鏡を上げて目を擦り、もう一度画面をじっくり見た
目をパチパチさせても見える文字は変わっていない
「気になる名前でもあったか?」
捜一から預かった事件のファイルをチェックしていた降谷は分かっていたかの様に風見に聞いた
「いえ…」
気になる名前ではあったが、同一人物ではないだろうとこの場では見送る事にした
それでも何か気になるようであれば別で調べれば良い事で、私情も含んだこの疑問に上司の手を煩わせる訳にはいかないと、見ていた資料を次へと進める
「パーティーは2週間後ですか…これだけ名のある企業のトップが集まり、更に先日事件が起こったばかりでは、警備を強化せざるを得ませんね」
本来なら事件を受けてパーティーを中止にするような気もするが、この名簿を見せられたという事は中止はしないんだろうと開催を前提に話す
そして捜査権が公安にある今、事件が解決しようがしまいが、警備は公安が中心となるだろう…
「それで、警備の為だけにこれを見せた訳ではないですよね?」
「察しが良いな…」
そりゃどれだけ貴方の連絡係りをやっていると思っているんだと言いたくなるのを我慢して次の言葉を待った
「秘書夫婦失踪事件の犯人は…このリストの中にいる」