第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
昨日の水難救助後、安易に他人を自宅に入れてしまったのはやはり公安の刑事としてするべきではなかった
ただやむを得ない事情であったし、一度限りのことだと、飛田としての関わりであれば問題ないと思ったのが間違いだったかもしれない
いや、非番だからと気軽に河原を散歩していたのがそもそもの間違いだったのか…?
でも自分がいかなかったら星宮さんも男の子も危なかったかもしれないし…
というか何故自分はあの時川に飛び込んだんだ
飛び込むのは最終手段だと以前上司に言われたばかりじゃないか…
あれから風見は昨日の事を何度もループしながら考えていた
そしてその度に口から出ていく溜め息に、周りの部下もそろそろ心配の目を向けるのだった
「風見さん溜め息何回目ですか」
隣りのデスクに座る部下に声を掛けられ、何回目と言われる程自分は溜め息をついていたのかと気付く
「珍しいですね。さっきの捜一の子に失恋でもしたんですか?」
「しつ、れん…?」
可愛い子を泣かすなんて、とからかわれるが、風見は言い返すことなく一点を見つめて冷静に考えた
恋すらしていないのに失恋は有り得ない
いや、恋…?
自分は恋をしていたのか…?
風見はもう一度水難救助をしていたカナの責任感に溢れた態度を思い出す
そして次に思い浮かべたのは、自分の大きなシャツを着て無邪気に笑うカナの姿…
「どうかしました?」
気付けば昨日から星宮さんの事ばかり考えてしまう
もちろん自分の置かれている立場を忘れていたわけではないが、このまま飛田として星宮さんと時々でいいから会うことができたら…そう思ったのも事実だ
この仕事に就いてからそんな事を思った人物などいないし、むしろいない方が都合がいいと思っていた
だが今回は違う…
そうか、自分は恋をしていたのか…
「失恋したかもしれんな…」
「なっ!?風見さんマジで言ってます!?」
何度目か分からない溜め息は今日一番に深く、そのまま頭を抱える様に机に突っ伏した
もう今日は仕事の話など頭に入らない、そう思っていた時だった
「失恋がなんだって?」
「ほっといてくれ…」
背後から聞こえた声に答えるも、「ん?」と冷静になる
そしてハッとして勢いのままに振り返り立ち上がった
「ふっ、ふるっ、降谷さんんん!?」