第1章 事件1.新米刑事恋を知る
「息子さんは私がなんとかします!できるだけ人を集めて、落ち着いて119番通報をお願いします!」
こんな時は二次災害を防ぐ為に自ら川に飛び込んではいけない
でも人やレスキューを待っていては、あの子はきっと間に合わない
引き上げられなくても、レスキューが来るまで呼吸ができるように支えてあげられれば…
そう考えながらカナは鞄を下ろし靴と上着を脱ぎ捨て、溺れている男の子よりも川上の方から川へ入っていった
川は数歩進むと急に深くなり、泳いで進むしかなかった
泳ぎに自信がある訳ではないが、警察学校で水難救助の経験はしてきた
男の子の所へ行くくらいならなんとかなるだろう…
そう思ったが、急流に身体を押されながら泳ぐのは思っていたよりも進行を妨げられ、体力を奪われる
途中途中波立つ流れにカナ自身がのまれそうになるが、なんとか男の子の元へと辿り着いた
「ボク、大丈夫!?」
「うわあぁぁーっ!!」
カナは流木に引っ掛かって止まっていた男の子の顔が水面から出るように抱き上げた
水は多少なりと飲んでいるだろうが、大きな声で泣きじゃくる様子にまずは一安心
息は出来ている…あとはこのパニックを落ち着けてあげないと、万が一の事があったら連れて泳げない…
男の子を抱き上げるもカナ自身足は底に着いておらず、岩に引っ掛かっている流木を支えに浮いている状態である
この引っ掛かりが崩れてしまったら、2人で流されてしまうのは誰もが予測できることであった
「もう大丈夫よ、早くお母さんの所に戻ろうね」
濡れた髪を整え、顔に掛かった水を手で拭ってやる
辛うじて水面から出ている岩のてっぺんに男の子の身体を乗せ、落ちないよう水の中から両手で支えた
まだまだ泣き止まない男の子だが、これで水を避けることはできた
川岸を見ると人も集まって来ており、アレやコレやと動く姿が遠く見えるが、レスキュー隊はまだ到着していない
このまま耐えられれば良いが、水温の低さにカナの体温も奪われていく
そして最悪なことに、
「姉ちゃん!危ねぇぞぉ!!」
川岸からの声に後ろを振り向くと、新たな流木がカナ目掛けて流れてきている
このままぶつかってバランスを崩したら2人で溺れる…!
カナは男の子をしっかりと支え、歯を食いしばって流木の衝撃に備えた