第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
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ポアロへは佐藤の赤いRX7で向かうことになり、助手席には高木、カナはちょっぴり狭いが後部座席へと座る
会話の弾む佐藤と高木を目の前に、少し飛田について気持ちの整理をしようと窓の外に目をやった
「(飛田さん…)」
カナの頭に浮かぶのは、昨日の水難救助でのあのたくましい飛田の顔、そしてその後の照れた様に笑う優しい飛田の顔…
やっぱり好きになっちゃったんだな…と思うも、つい先程会った風見が頭の中の飛田を打ち砕いていく
名前は違えど同じ人……飛田本人から「忘れて欲しい」と言われたのは……あぁ、きっとこれが失恋というやつなのか…
好きと自覚して1時間としないで失恋をするだなんて思ってもいなかった…こんなだから恋するってのは嫌なんだ…
と、前に座る2人に聞こえない様に小さく深く、溜め息をついた
だがそんなカナの様子をバックミラーで見てしまった佐藤と高木は目を合わせ心配な表情を見せる
飛田の話をしてとっても嬉しそうにしていたカナが、公安部から帰ってきたら全く真逆な浮かない顔をしている
やっぱり1人で行かせず一緒に付いて行けば良かったかもしれないと、2人は少なからず責任を感じている様子であった
「カナ、今日は高木君の奢りだから好きなのたくさん食べて良いわよ!」
「僕ですか!?」
「………はい!じゃあ遠慮なく!」
なんとなく気遣ってくれているのがわかり、この2人の前であまり暗い顔はしちゃいけないなといつもの元気を振る舞う
そして気持ちを切り替えようと、カナは頭の中をポアロのメニューで一杯にした
車は目的地付近の駐車場に着きポアロまでは徒歩で向かう
ポアロや上の階の毛利探偵事務所では頻繁に事件が起きる為足を運ぶ機会が増え、またポアロの食事も最高に美味しいのでプライベートで通ったりもしていて、良くも悪くもこの道をよく通るようになったなとしみじみ感じながら歩いて行った
カランとドアベルを鳴らしながら店に入れば、この店の看板店員である金髪の男性、安室透がにこやかに迎えてくれる
「いらっしゃいませ!」
「あ、星宮刑事、今日は佐藤刑事と高木刑事も一緒なんだね!」
カウンター席にはカナが会いたがっていた江戸川コナンが座っていて、他にお客はいなかった