第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
取調室の目の前で佐藤は腕を組みながら待っていて、怒っているかと思えば取調室から勢い良く出てきたカナに心配そうな顔を向けた
カナもまた佐藤の顔を見て緊張が解れたのか、再び目頭がジンと熱くなり視界が滲み始める
「ほら行くわよっ!こんな空気の悪い所にいつまでもいられないわっ!」
カナは佐藤に手を引かれながらエレベーターまでの廊下を歩く
前を歩く佐藤はきっと心配してくれているに違いない
ここであったことを今すぐにでも聞いて欲しいと思うが、先程話した昨日の飛田と公安の風見が同一人物だったということは安易に口にしてはいけない…となると何も話せなくなり、カナは唇を噛みながら俯くしかなかった
エレベーターの扉が閉まると更に沈黙を感じたが、二人だけの空間になると佐藤から気にかけてくれる
「言いたくないなら無理に聞かないけど、酷いことを言われた訳ではないのね?」
はい…と一言頷いた内心では、ある意味酷いことを言われたような気もするとも思う
「じゃあカナが余計なことを言って風見刑事を怒らせて説教されていた訳でもないわね?」
「はい…って!なんでそうなるんですか!私そんな強く出しゃばるタイプじゃない……はずです!!」
そこは断言しないのかと軽いツッコミと同時に、上げた頭に手を置かれる
目と目が合うと佐藤は意地悪な顔で
「じゃあカナにはまだ公安へのお遣いは早かったって事で良いわね」
と言いながらヨシヨーシと棒読みで頭をクシャクシャにしていく
「ふぇ…美和子さぁん…」
クシャッとなる顔を両手で隠すとエレベーターが開き、今度は佐藤に背中を押されながら歩き出した
「目暮警部がカナが戻ったら上がっていいって言ってくれたのよ。気分転換に何か食べに行きましょ?」
「ホントですか!?私、愛しのコナン君に会いたいのでポアロがいいです!!」
さっきまでの崩れた顔はどこへ行ったのか、パァッと明るくリクエストするカナに佐藤は少し安心した
「(甘い物でも食べれば何があったか話してくれるかしら…)」
「(なんとか飛田さんの話は避けないと…)」
この後自ら地雷を踏みに行くとは知らず、カナは佐藤と高木と一緒に退勤しポアロへと行くのであった…