• テキストサイズ

これが恋ですか?【DC/風見裕也】

第2章 事件2.刑事2人恋に迷う


「失礼します。捜査一課の佐藤です」

部屋に入るなり佐藤は風見の顔を見て眉をピクッと動かした
明らかに不機嫌な表情に変わった佐藤を見た風見も、振り向いた顔を無にする

「何か?」
「ウチの部下がなかなか戻らないので不手際でもあったのかと」

そう言う佐藤の口調からは「早くカナを返しなさい」と言う気持ちが重ねられている様に聞こえる
2人の間にはバチバチと火花が見える様で、カナはすぐに涙を拭って平然を装おうとした

「美和子さんすいません…連絡入れるの忘れちゃいました」
「私が引き留めたんだ。彼女を責めないでやって欲しい」

「引き留めたって、こんな所に?」

取調室の中をグルりと見渡しながら佐藤は腕を組む
公安の刑事の前でも怯むことなく堂々としている佐藤にカナは焦りに似たものを感じ始め、これ以上火花が散らないようにと席を立った

「違うんです!遅くなってしまったのは捜査の引き継ぎをする為で、ここにいるのはこの部屋しか空きがなかっただけなんです!」

このまま話が拗れる前に2人を離さなければと、ワタワタと佐藤に駆け寄り廊下の方を向かせ、背中を押して廊下へと押し出した

「ちょっと何なのよ!?ただそれだけなのに何故泣いてるの!?」
「これはなんでもありません!すぐに戻るのでここで待っててください!」

そう言ったカナは佐藤を廊下に残したまま取調室のドアを閉め、背中で塞いだ
そして立ち上がっていた風見を見上げ、唇をグッと噛む
見上げた瞳は鋭いがまだ微かに潤んでいて、風見は心臓を掴まれたかの様にキュッと痛みを感じる

「星宮刑…」
「みっともない所をお見せしてしまい申し訳ありませんでした。先程の件ですが、急なことで気持ちの整理がつきません…。でも私も警察官の1人です。何を優先しなければいけないかくらいわかりますので、今後のことは心配なさらないでください。昨日に引き続きご迷惑をおかけしてすいませんでした。事件のことは目暮に問い合わせてください。失礼します」

どこで息継ぎをしたのかわからないくらい言葉を並べペコっと頭を下げたカナは、風見の顔を見ずにすぐ取調室を出て行った
返事を返す間もなく閉められたドアに、呼び止めようとした風見の右手は行き場を無くしていた




/ 48ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp