第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
「その後が気がかりだったので消防に事故の調査だと言って聞いたんです」
目と目が合ったところでフッと風見が見せた笑顔が、昨日の飛田を思い出させる
「良かった…」
もちろんこの良かったは男の子が元気でいるということがわかったからというのもあるが、もう1つ、公安刑事さながらの独特な雰囲気を出していた風見から柔らかい表情が見えた安堵の意味も含まれていた
そして風見から昨日の話が出たということは、この風見は飛田と同一人物で間違いないとカナは確信した
「飛田さんが公安刑事の風見警部補だったなんて思いもしませんでした…」
「私も驚きました。あなたが捜査一課の刑事だったとは…」
今になってよく考えて見ればあの水難救助だってお互い一般の民間人とは思えない対応の仕方であったし、公務員と聞いて同じ警察官だという考えに辿り着いてもおかしくはなかった
そして風見がカナに飛田と名乗ったが為にレスキュー隊員を避けたのも頷ける
「あのっ…私が風見警部補の偽名を知ってしまって支障はありませんか!?私だって警察組織の事は学んできています。公安の刑事の事だって全てではありませんがどの様な組織かということもなんとなくわかっています。なのに家だけでなく色々と知ってしまったし…風見警部補の業務に支障が出てしまったら、私、本当に申し訳なくて…」
「この状況でも私の立場を心配するなんて、あなたは本当に優しいですね…。まぁ正直、上司には何を言われるかわかりません…」
風見と飛田が同一人物だと簡単に知られて注意だけでは済まないかもしれないが、知られた相手が刑事であり公安への理解もあったのが不幸中の幸いだと風見は思った
しかし同時にカナは風見が上司から処分を受けてしまうのではと焦り出す
「私にできることならなんでも言ってください…!」
「なんでも…ですか?」
「できる範囲で…ですけど…」
公安として今後の為にどうすべきか、風見は少し沈黙して考えた
そしていくつかの案の中からひとつを選び出し口にする
「では、昨日のことは忘れてください。飛田との接触はなかった。私とあなたはただの公安と捜査一課の刑事という間柄でしか…、っ!!」
柔らかい表情がなくなった風見が淡々と話をしていると、まっすぐに風見を見ていたカナの目がじわじわと涙で覆われていくのが見えた