第2章 事件2.刑事2人恋に迷う
公安に事件の資料を持ってくるよう言われ、上司の命令で初めて公安のフロアに来ているカナ
風見警部補という公安刑事を訪ね、両手に抱えてきた資料を渡せば簡単に終わると思っていたはずなのに…
「(何で私今、取調室にいるのォ!?)」
ひーんと泣きそうになりながら一人パイプ椅子に座っているカナは、現在公安フロアにある取調室にいた
何故資料を届けにきただけのカナが取調室にいるのかというと、遡ること10分前…
***
「「ええぇぇぇーっ!?」」
ドアを開けて出てきた風見と廊下で待っていたカナの驚く声がフロア中に響き渡った
「風見さんどうされました!?」
その声を聞いて部署から出て来た風見の部下数人が目にしたのは、目をまん丸くさせて固まっている捜査一課の女性刑事と、口をあんぐり開けて固まる自分の上司だった
「風見さん大丈夫ですか?」
「そっちの子も大丈夫…?」
風見の部下に心配されてもカナの耳には届いていない
何故なら目の前にいる風見という刑事のことで脳内処理が追いついていないからだ
「(風見刑事に会いに来たのに、何で飛田さんが出て来るの!?)」
飛田さんは双子だったのか、それとも瓜二つな兄弟が出てきたのか…そもそも飛田という名前で偽られたのか…
色々な可能性がカナの頭の中で飛び交っている
しかしその中に答えはあり、カナが昨日出会った飛田という男は公安刑事の風見本人で、カナが聞いた名前は偽名であった
風見の方も偽名を使って出会った女性とこんなにも早く、しかも職場で再会を果たすとは思ってもいなかった為、どう接して良いものかと頭の中は大混乱中だった
だがこのままではいけないと、2人きりで話をしようと決めた
「風見さん?」
「…あ、あぁ、大丈夫だ。ところで、空いている会議室はあるか?」
聞かれた部下は部署内のホワイトボードを遠目に確認する
「会議室はどこも使ってますね…第1取調室なら空いているんですが…」
「取調室…」
なんとなく響きが良くない気もしたが、2人きりで話をするには仕方がない
「星宮刑事、事件の引き継ぎをしたい。そこの第1取調室で待っててくれ」
取調室を指差し昨日とは正反対の業務的な口調の風見に、カナは従うしかなかった