第1章 事件1.新米刑事恋を知る
「失礼します。捜査一課の星宮です。風見警部補のご指示で捜査資料をお持ちしました」
初めて開けたドアの向こうは思っていたよりも明るく、強面揃いだと思っていた室内もイメージしていたものとは全く違っていた
確かに麻薬捜査官や暴力団絡みに出向きそうな強面刑事もいるが、中には穏やかそうな人や爽やか系など十人十色で捜一とあまり変わらなかった
「捜一の子?呼んで来るから廊下で待っててくれるかい?」
「はい!お願いします…」
捜査一課と聞いて邪険に扱われると思ったがそんなことはなく、ドアに一番近い若めの刑事が優しく対応をしてくれてカナはホッと一安心した
機密事項もたくさん扱っているからなのか廊下で待つよう言われ、ドアが閉められる
カナはファイルを抱えたままドアから少し離れた所に立ち、風見が来るのを待った
「(ここまで来れば、あとはこれを渡して戻るだけ…!)」
色々と覚悟を決めて来たお遣いもあっさり終わってしまいそうだと、力の入ったままだった肩を少しだけ下ろすことができた
一方、公安部の部署内にある給湯室に風見警部補はいた
「風見さん、捜一の可愛い子が資料届けに来てますよ!」
「可愛い子ってお前な…」
部下の声に沸かしていたヤカンの火を止めた風見は、“可愛い子”と聞いて女性刑事が来たのだと察した
「(目暮警部の所の女性と言ったら佐藤警部補か…いや、彼女はどちらかというと可愛い系ではなく美人系に属する気もするが…)」
など考えながら給湯室を出て部署内を通り、廊下に続くドアを開けた
「待たせてすまない…、…!?」
ドアを開け、立っていた女性刑事にそう声を掛けた風見の動きが止まった
「いえ、とんでもな…、…!?」
そして廊下で待っていたカナは出てきた風見を見て言葉が止まった
「………」
「………」
風見の目の前に現れたのは、昨日出会ったカナ
カナの目の前に現れたのは、昨日出会った飛田
「星宮さん…?」
「飛田さん…?」
カナが捜査一課の刑事だったとは…
飛田が公安刑事の風見と同一人物だったとは…
「「ええぇぇぇーっ!?!?!?」」
予期せぬ事ばかりが起こるそんな2人の恋が実るのは、まだまだ先のおはなし…
━第1章END━