第1章 事件1.新米刑事恋を知る
「私、風見さんってまだ会ったことがないんですけど、またと言うくらい関わりがあるんですか?」
「私達のヤマによくストップをかけにくるのがその風見って刑事なのよ」
「たまたまかもしれませんが、風見刑事の確率高いですよね…」
公安の刑事と聞いてカナの頭の中には複数の強面の体格のいい男性像が浮かびあがっている
佐藤達の言う風見という刑事も強面で高圧的に捜査の中止を言いに来るんだろうなと想像してゾッとした
でも考えてみればこの三係が公安案件の事件に遭遇しやすいのかなともカナは思う訳で、
「でもそれってウチが公安が扱うような大きなヤマの入りを押さえて、今回の様にウチでまとめた資料が上の人達の役に立ってるってことじゃないですか?」
と言うと、佐藤は本日何度目かの溜め息をついてしまった
「汗水垂らして時には危険を犯して手に入れた情報を理由も知らされず途中で全部横取りされて、事件も解決したんだか揉み消されたんだかわからなくなっても同じことが言えるかしら?」
「うっ…それはちょっと嫌かも…」
他の課で担当すべき事件に切り替わったのであれば事件の引渡しもわかるが、理由も結果も知らされずというのは良い気持ちはしない
佐藤の言葉を聞いて、毛嫌いするのもわかるなぁと思った
「まぁまぁ、君達も警察官なんだ、我々刑事は国民市民の安心安全を守る、公安は国家の安全を守るという違いくらいは心得ているだろう」
腑に落ちない時もあるが仕方ないと目暮は言う
そして公安に資料を届ける前にカナ達ももう一度資料に目を通しておくようにと、読み終えたファイルが手渡された
1冊目は事件の概要…
『小森財閥秘書夫婦失踪事件』
小森財閥社長の秘書をしていた男性が出勤せず連絡も取れずで、その妻の行方もわからず警察に通報…
家には荒らされた形跡もなく、初動捜査では事件性は低いと判断された
しかし有名な財閥の社長の秘書ということもあり警察側も普段以上に慎重になるわけで、何か手掛かりはないかと色々と探っていると、ソファと床の接着面から微量な血痕が発見され、事件の可能性も視野に入れて捜査をすることになった
「血痕以外の手掛かりはなく、捜査は難航中か…」
「特捜が立ち上がる予定がその前に公安が介入することになり我々の捜査はストップだ」
目暮は苦い顔で頭を抱えた
