第1章 事件1.新米刑事恋を知る
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「それで、ココアを入れてもらって、ヨーコちゃんの話しで盛り上がって、帰りは『そんなダボダボな服で歩いてはいけません!』って言われて車で家まで送ってもらっちゃいました…!」
一通りの話を聞いた佐藤と高木は同時に深くため息をついた
「どこからどうツッコミを入れればいいかわからなくなったわ…」
「緊急事態とはいえ女性に下着を買ってあげるだなんて!僕だってまだ佐藤さんにプレゼントしたことないのに…!!」
「美和子さん高木君をセクハラの疑いで逮捕してください!」
「疑いの段階で逮捕するな!っていうか僕はセクハラしてない!」
目の前でギャーギャー騒ぐ後輩2人のこの感じに佐藤のため息は深まるばかり
だが、カナの様子が今までにないくらいフワフワしているのを佐藤は見逃しておらず、少なからずカナが飛田に好意を持っていると感じたのだった
「それで、カナはその飛田って人が好きになっちゃったって感じかしら?」
「え、好き!?私、飛田さんのこと好きなんですか!?」
「なんで佐藤さんに聞くかな」
カナはピタリと動きを止め、自分の気持ちを振り返る
しかし恋愛感情なんてよくわかっていないカナに今の自分のこの気持ちが“好き”という感情なのか判断がつかず、佐藤と高木の視線にオドオドし始めてしまった
「あの、…好きってどういう感じですか…?」
若干涙目になりながら困っているカナに、佐藤と高木は目を合わせ頬を紅くした
「そ、そうね…」
「星宮は気付いたら相手のことばかり考えていたり、また会いたいな、とか、相手が喜ぶことをしたいな、とか、相手もそうであって欲しいなぁとか思ったりしないのかい?」
「うーん…まだ昨日のことだからよくわからないけど、あれからずっと飛田さんのこと考えてる…こんなこと今までなかったのに…」
「なら好きかどうかなんて考えなくてももう答えは出ているじゃないか」
「仕事仕事で気付いてないかもしれないけど、カナはどこの課でも名前が上がるくらい人気があるんだから自信持ってアプローチしてみなさい?」
応援するわ、と佐藤に頭を撫でられながら、カナの頭の中にはニコッと笑う飛田の姿が浮かび、気付けば会いたいなぁという気持ちになっていた
「(あぁ、これが恋なのかな…)」