第1章 事件1.新米刑事恋を知る
「“こんな物”だなんて言ったら品物に失礼ですね」
「そうですね…」
口元を押さえて笑うカナに、頭をポリポリする飛田
緊張や気恥しい気持ちがスーッと抜け、お互いに気が楽になった
「自分はリビングにいますので、身支度できたら声を掛けてください」
「はい、ありがとうございます」
下着が通ったドアの隙間を閉めた飛田は脱衣所の前から遠ざかり、カナも貰った下着のパッケージを開きすぐに着替えた
ジャージのズボンはやはり大きくて、ウエストの紐をギューッと伸ばしリボン結びにする
裾は何回捲ったのか数えられない程クルクルし、これでなんとか歩くことができそうだ
ショーツもキャミソールも良いサイズだし、Tシャツは時々肩がズレてしまうけれど問題ない
そして急いで濡れた髪を乾かし、浴室や脱衣所で汚してしまった所はないかチェックをした
自分の長い髪の毛が落ちていたら申し訳ないし、借りた場所はキレイにして返さないとと気なってしまうのがカナである
でもさすがに浴室の掃除までは他人の家だ、道具はわからないし、飛田のこだわりがあるかもしれない
なのでひと言申し訳ない気持ちだけは伝えておかなくちゃとリビングにいるであろう飛田の元へと早足で向かった
廊下とリビングの間にはドアがあり、3回ノックしてからガチャりと開ける
「飛田さん、お風呂ありがとうございました!お掃除とかでき…あっ!」
「……!」
カナの開けたドアの向こうには、パーカー姿の飛田がリビングに散らばった雑誌を拾い集めているところで、見られては困るのか物凄い勢いで束ねては両腕で隠すように胸に抱きとめた
「すいません散らかっていて!なんせ男の一人暮らしなもんで…」
「いえ!私こそ勝手に開けてしまってすいません!」
散らかっていると言う程物は散乱していないが、プライベートゾーンに他人が入るとなると多少は気になるものだ
申し訳なく思ったカナが頭を下げるとサイズが大きいTシャツは首元が大きく伸び開き、中に着ているキャミソールが見えそうになる
「わっ!星宮さん服が!」
「きゃっ!」
見ちゃいけないと思った飛田は両手で自分の視線の先を遮るように隠し、カナの方はパカッと開いた首元を両手で隠す
もちろん飛田が抱えていた雑誌はバサバサと音を立て落ちていき、足元へと散らばった