第1章 事件1.新米刑事恋を知る
「飛田さん、お借りします!」
無断で借りるのも申し訳ないのでここにいない飛田にひと言断りを入れ、ドライヤーの電源を入れた
上はTシャツ、下はバスタオルを巻いたまましゃがんで下着にドライヤーの風を当てていく
飛田さんが帰って来る前に乾いてくれればいいんだけど…と思うも、びっしょりと濡れた布はそう簡単に乾いてはくれない
はぁ…とついたため息は脱衣所に響くドライヤーの音にかき消された
「戻りました!星宮さん、少し隙間開けても良いですか?」
「……!」
ドライヤーの音で玄関の開く音も飛田の足音も聞こえず、突然の声掛けにカナの肩が跳ねた
「お、おかえりなさい!?」
「あっ、えっと…ただいま…ですか?」
一緒に住んでいるかの様な挨拶に、脱衣所のドアを挟んでお互い「何言ってんだ?」と首を傾げているのは全く見えていない
「あの、すいません勝手にドライヤーお借りしてます」
「どうぞ使ってください!」
そう言った飛田の方からガサガサとビニール袋の音がした
そしてボヤキに近い声で「そっか、ドライヤーで乾かすって手があったか…」と言ったのをカナは聞き逃さなかった
ドライヤーとノーパン以外の方法とは…と、カナは先程とは逆に首を傾げる
「少し開けますよ」
そう言って3cm程の隙間から差し込まれたのはコンビニで買ってきたであろう品物だった
カナはドライヤーを止め、隙間から床に置かれたそれを手に取る
そしてパッケージに書かれた“レギュラーショーツ”という文字を見て驚いた
「えっ…こ、コレ!わざわざ買ってきてくれたんですか!?」
「はい!自分もビショビショだったので星宮さんも困っているのではないかと…でもドライヤーで乾かせばなんとかなりましたね…」
あとコレも、と言い再び隙間から渡されたのがカップ付きキャミソールだった
「なんかすいませんこんな物買わせてしまって!!」
出会って間もないのに、男性に女性の下着を買わせてしまった申し訳さと恥ずかしい気持ちで一杯になり、頬を赤くした
「とんでもない!逆にこんな物しか買えなくてすいません!」
「そ、そういう意味でいったんじゃなくて!こんな物でも助かります!」
こんな物……
「……ふふっ」
「……はははっ」
どちらからでもなく、2人は扉越しに笑い出した