第8章 補聴器
マミにとっては。
もう……穴があったら入りたいって。 こういう事言うのね。って思うくらいの。話のオンパレードだった。
──
「昨日? スーパー?」
(え? 助けてくれたのって……)
「 おっと。 大事な事 忘れてた」
プチパニックに陥っている、マミとは逆に。
再び、紙を出してサラサラと何か書いて。マミに渡してきた。彼。
『でづか たくま』
「 漢字じゃ、読み方分らないでしょ」
それは名前のふりがなを書いた紙で。
促されてマミも。
『かんざき まみ』
と。書いて渡して。
「あ、あの。で、でじゅかさん?」
ボッ。
噛んでしまったマミは、頬を真っ赤に染めて。
恥ずかしがっているマミに。
「出塚。でづか。ムズイよね。俺でもたまに噛むもん」
サラッと、気にしなくていいよ。って風に、拓眞は答えて。
「マミちゃん……マメちゃんかぁ」
さらに、ちいちゃく呟いて。
(ん? マ……メちゃん)
声がちっちゃすぎるのと。あまり、しっかりと口開けて発音してくれなかったから、マミには、ちょっと解読不可能で。
「スーパーでは焦っていたみたいだから。っていうか。うちの図書館の常連さんじゃん、マメちゃん。だから分かるの」
(ど、どうしよう…… 変な汗で出てきた)
マミはが、 今度は、青くなってるのを見て。
「本や、返却カードとか返す時。マメちゃん、 あんまり目が合わないようにしてたっぽいし。 用事がある時はメモで示してくれてたじゃん? それに無意識だろうけどさ。本に熱中してる時。髪をかきあげた時にね。ちらっと見えちゃったの……」
マミは、さっと。左側の横の髪をかき上げると……
「 気づいてらしたんですね……補聴器のこと。それに……」
*補聴器 https://www.bloomhearing.jp/ja-jp/hearingaid/structure Wikipedia参照