第7章 ぎゆっ。
(なんでこんな状況になってんの?)
頭の中? だらけなのに。
素直に拓眞に付いて行って。気が付いたらファストフード店で、ハンバーガーのセットなんか注文しちゃってたマミ。
オマケに……
「あ、あのっ。 ごめんなさいっ ! ハンバーガーの代金払いますから。それに。さっきも助けていただいて」
さっき……か……拓眞は思い返す。
──-
マミは、ザワザワとした喧騒に表情を強張らせながら。拓眞の後ろを歩いていた。
拓眞が、マミに チラッと視線を向けて。
(緊張感漂ってるなぁ)
なんて、思いつつ前に向き直ると 。
前方から歩いてくる数人の男女のグループが……
おしゃべりに夢中になっていて。ほとんど前を向いて歩いてなかった。
(たく、危ないな)
拓眞は。
(大丈夫だよ)
安心させてあげなくちゃって思った瞬間。
ぎゅっ。
ブラックのコートの、フラップポケットに両手を入れて歩いていた拓眞の右肘。遠慮がちに左手で、ぎゅっ。ってしてきたマミがいて。
拓眞が振り返ると。
怖いよ。と言うように 表情を強張らせたマミがいた。
けど、マミの表情とは裏腹。拓眞は。
(ぎゅっ。とか。可愛いすぎでしょ)
なんて。思ってた。
緩みそうな顔を引き締めると。拓眞は、庇うようにマミの目の前に立ち。若者たちが自分たちの横を通り過ぎるまで守ったのだった。
──-
「謝らなくてくていいから。あの子たちが悪いんだし。ザワザワって人の声がしたし。昨日もさ。不安になってさ。怖かったよね?」
思わずマミは、ビックリして。拓眞の顔を凝視してしまっていた。
「だってさ。 スーパーは自分勝手な客の対応も大変だろうけどさ。接客の仕事なんだから、透明マスクを使用するとかさ。 それは俺の事でもあって。反省したんだ。 街中でだって。『自分だけが良ければ』じゃなくて。人の事をもっと気遣わなきゃって……マミちゃん、左耳が、さ?」