第9章 キミの涙。心が切なくて
「気づいてらしたんですね……補聴器のこと。それに……」
拓眞は、 話をしている マミを見つめながら 。
(マミちゃんて、話をする時ジッと相手の表情、目を見つめるんだなぁ。可愛いな)
心が、ぎゅっ。
って なる感覚を覚えていた。
「……あの、私、間違えて書きましたか? マメって。マミです」
けど、ジッと見つめて来る、その大きな瞳は不安そうに揺れていて。
(あ、ヤベ)
拓眞は、 自分が感じた想いと。口に出した言葉がマミにとっては……
「ごめんなさい。マミちゃん。大丈夫。書き間違えてなんかないよ。マミちゃん って、名前もだけどさ。なんか可愛い子だなぁ。マメちゃんて感じだなぁ、なんて思っちゃって」
ボッ。
マミは、なんか、照れちゃうような言葉で答えた拓眞に、ほっぺたが熱くなって
ぎゅっ。
って、心から音がして。
「色々とごめんなさい。本当に」
「なんで謝るの?」
なんでか急、に謝ってきたマミに。拓眞は 。
(ん?)
って思って。
優しく聞き返す。
「昨日は急いでいたとはいえ、助けていただいたのにお礼も言わずに帰っちゃうし。今日も。図書館では、貴方に気がつかないで。オマケにいつも下を向いて……とか。今まで失礼な態度ばかりとってきて。このお店に来る前には。ぎゅっ。って、で、でづ、かさんのコートつかんじゃうし。本当にごめんなさい」
マミが、大きくて綺麗な、二重の瞳に涙を浮かべて謝るのを。拓眞は。
ぎゅっ。
って心締め付けられて。心が苦しくなって。
「マミちゃん。謝らないで。キミは悪くないから。スーパーではあの親父がっ。間違いなく悪いし! 自動支払機の存在を知らなかったんだし。耳……の事とかね。透明マスクを使用するとか。店側が対を応検討しなきゃなんなかったしね。それは俺も同じ。図書館で。接客業で働いている者としてね。恥ずかしいよ。さっきも言ったけど。あの子たちは、人の迷惑も省みず大声で話して。周囲に目を配らないで歩いてたのが悪いしね」