第41章 『月が綺麗ですね。』『ずっと月をみていましょう。』
「『ありがとうございました』って、他意はない、素直にそのまんまの意味なんだろうけど 。なんか……もう繋がりがなくなっちゃいそうでイヤだな」
「拓眞さん?」
「マメちゃんって呼んでも、受け入れてくれて」
「訂正したって拓眞さん、改めてくれないじゃないですか。 私受け入れた覚えありません!」
拓眞は、ちょっと、ムっ 。て、唇を尖らせて反論して来たマミが。
「真面目だけど 、おちゃめなマメちゃんが可愛くて、愛おしいんだ。 この先、守っていきたい」
-ボッ-
マミは、拓眞の不意打ちな言葉に、頬を真っ赤に 染めて。
(う~)
声にならない声で唸っていると。
さらさらと。紙に何かを書き付けていた拓眞が。
スッて。
右斜め前の。はす向かいに座るマミに差し出してきて。
『れかもこら、とっず、てにそいば。月が綺麗ですね』
*(夏目漱石?)
本が好きな人間なら、 聞いた事があるかもしれない、ロマンティックな愛の言葉。
(れかもこら、てにそいば? え?)
夏目漱石に、引っ張られてしまったマミだったけど。
初めに、暗号で名前を伝え合った時の。
ふたりの暗号……
今は、愛言葉《あいことば》……
-ボッ-
再び、頬を真っ赤に染めたマミ。
有名な言葉の前に記されていた言葉の意味を、理解してしまったマミ。
マミは、深呼吸すると。
さらさらと。何かを書きつけて。
『したをわ、いびみてち、たとれひく。ずっと月をみていましょう』
スッて。
紙を戻してきたマミ。
瞬間、破顔して満面の笑顔になった拓眞。
『 これからも、ずっと、そばいいて。 月が綺麗ですね』
『わたしを、みちびいて、くれたひと。ずっと月をみていましょう』
想いを伝え合ったった二人。
マミは幸せで、溢れてくる涙を止められなくて。