第40章 じゃぁ、お互い様だね
「マメちゃんに寄り添ってもらえるお年寄りたちは幸せだね。俺、いろんな人にね、本に触れ合って欲しい。って願っていながら、全然向き合っていない事に気づかされたんだ。 紙芝居プロジェクトみたいにね 。究極の形で子供たちに届けられたのは凄い良かったと思う」
「拓眞さん?」
「けどね。 図書館に置いてある。点字の本や、開くと音声で物語を読んでくれる本。とか。もっともっと、必要としている人たちに提供する努力が必要だったのに。お客さんと接する時、透明マスクをする事の意味を考えなきゃいけなかったのに……マメちゃんが気づかせてくれたんだよ。もっと相手の立場に立って考えなきゃいけない。って事を」
「拓眞さん。私も同じ。逃げてばかりで。自分のことを相手に分かってもらう努力をしなかったんです。相手の話すことが理解出来ないことが増えて。誰も自分のこと分かってくれない。もういいや。って。諦めて。拓眞さんが、 自分から働きかければ、相手も心を開いてくれる。って言うことを教えてくれたんです」
「じゃぁ、お互い様だね? ちょっと話し変えていい? 俺たちさ。けっこう近所に住んでたのに、地区内とか。学校でさ全然接点なかったよね?」
「介護の仕事に就きたくて。介護福祉士になるには実務者研修の講座を修了をしなきゃいけないんですけど。 就職先が中々決まらなくて。 一年前に、今の職場のデイサービスと、訪問介護の仕事を見つけたはいいけど。以前住んでた場所より離れていて。 母が私のために、この街に引っ越してくれたんです」
「そうなんだ 。ところでマメちゃんって何歳なの?」、
「21歳です。専門学校に二年間通って、介護福祉士になる道もあったんですけど……早く働いて母を助けたくて…… でも職場が見つからなくて」
「心配ないよ。マメちゃんの気持ちは、お母さんにちゃんと伝わってるから。あ、ちなみに俺は23歳です。 短大に通って司書講習を受けて司書になりました」
「拓眞さんは、私が選んだ道は「間違ってなかったよ」って。初めから、私の耳のこととか、理解して接して下さって。あの……お財布事件の時も。本当に拓眞さんには感謝しています。ありがとうございました」