第39章 母のような人の心に寄り添う仕事がしたい
「マメちゃん、全部吐き出しちゃえ」
拓眞には、マミが『本は友達』と言った言葉の裏に何が隠されているんだろう? って。吐き出させてあげたくて。とことん聞いてあげなくては。って。
(なんで、わかっちやうの?)
マミは、思わず拓眞をジッと見つめて。溢れて来た涙を慌ててハンカチで拭うと。
「小さいときは、保育園の子たちも『少し自分と違う子がいる』って思いながら、も手伝ってくれたり。一方で右耳が聞こえないのは本当かな? って、右耳の方に話しかけてくる人もいて。 紙芝居に来てくれた子たち、この先イヤな思いすることなく生活していって欲しいって、 心から切に願っています」
「マジありえない……」
(それって、良い年した大人が……だろ?)
悲しい表情で。涙を溜めた瞳で。唇に微笑を浮かべたマミに、拓眞は心が、ぎゅっ。って痛くて。
「成長と共に、からからわれたり……傷つくのが怖くて。でも、本を読んでいる時は時間を忘れるくらい夢中になって。同じ本でも。気分で今日はこの人。って違う登場人物の気持ちになって読む遊びをして。楽しくて」
「うん」
「小学四年のとき、一緒のクラスになった愛朱実が意地悪する子たちを。いっつも蹴散らしてくれて。時には無謀にも大人にまで怒ってくれて」
マミが熱を出した時に聞いた話だけど。
(やっぱり)
「岡さん、さすが。カッコいいね。 子供たちも 今の笑顔失うことなくいてくれたらって思うし、 祈るよ、子供たちの幸せを」
拓眞が笑うと。
「はい。女の子だけどカッコいいんです。愛朱実は。そのときから一番の親友なんです。 私も祈り続けます子供たちの幸せを」
マミが笑顔を見せてくれて、拓眞はホッとして。
「母は看護師をしているんです。父が病で亡くなった後。必死に働いて私を育ててくれて。私、母のような。人の気持ちに寄り添う仕事がしたくて。この国のために頑張って来て下さったお年寄りのためになれたら。って。介護の仕事を選んだんです」