第38章 本は友達
「なんで? お年寄りの介護の仕事は本当に大変だと思う。心優しいマメちゃんは、真摯《しんし》にお年寄りに向き合っている姿が想像出来る。紙芝居への取り組み。子供たちへの想い。間違いなく『頑張り屋さん』だって分かるもん」
「拓眞さん……」
「『みんな、誰かのためにえらいな』って、言ったけど。マメちゃんこそ『誰かのためにえらいね』だよ」 「嬉しいです。私、直ぐ逃げちゃって。透明マスクに。人と話すのが怖くて下向くのも。 お年寄りたちとはコミュニケーションとれるんです。 でも、同僚たちが『 聞こえないのなら、この仕事選ばなきゃいいのに』 そう言ってるの気付いてて……」
「マメちゃん……ごめん話の腰折って 。そいつら殴っていいかな? 聞こえないんじゃなくて、聞こえづらいんだ。って。 じゃぁ、なぜ聞こえづらいかって考えを巡らせればさ。分かることだろっ! 聞こえづらいのをいいことに、嘘を確認しないで、助けることもしないでさっ!」
自分のために、こんなに怒ってくれる拓眞の優しさが嬉しくて。
「拓眞さん、 ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきます。だって 、殴った拓眞さんが悪い。って言われて、お仕事出来なくなるようなことになったら嫌ですもん」
なんだろう? マミの、このほんわかした雰囲気は。こっちのトゲトゲしてた気分を溶かしてくれるような……
「俺さ。本に囲まれて過ごす図書館が大好きで。本が好きでも、金銭的な理由でとかでね。本を買えない子達もいるんだよな。って思って。そういう子たちもたくさん本に触れあえる空間を『としょかんのおにいさん』になりたい。って思ったもう一つの理由ね。お手伝い出来たらって」
「そうなんですね。私も、いつも図書館で大好きな本を読んでいるときは、幸せな気持ちになれたんです……本は友達だから」