第36章 みんなの声が聞こえたよ
「マミちゃんがさ。 耳が聞こえないことは『しょうがないこと』だって 。でも 、いろんなこと言われると…… って、話してくれたんです。すごい、いっぱい悲しい思いしてきたんだろうなって、 俺心が苦しくなったんです」
拓眞の苦しげな表情に。
「本当に理不尽よね 。小学校に入って。さぁ、これから楽しいことがいっぱい起こるって、マミは ワクワクしてたのよ。マミは、 牛乳が嫌いなの。 飲めないの よ。きちんと担任の女の先生にも伝えたのに『飲み終わるまで、お昼休みの時間、遊んではいけません』って。 意地悪をしていた男の子たちが、パンを、 ある男の子の机の中に入れたのよ。それをマミがしたって。 聞く耳持たないで 。一度は私、謝りに行ったわ。けれど主人が、麻那斗《まなと》さんが。担任の間違いを。すごい剣幕で怒って。学校に訴えに行って。 その担任を。担任から降ろすところまで頑張ってくれたわ
「ナミさん……」
ナミの後悔と、マミの父麻那斗の怒り。切なくて。
「 私ね。保育園と小学校を。転勤族で、一回ずつ変わってるの。 その度に 、友達になった子と離れるのが悲しくて 『いつかお別れなら、誰とも仲良くなんかならない!』って……」
「岡ちゃん……」
朔弥は、なんて声をかけてあげれば良いか分からなくて。
「小学校四年でと出会って。マミに嫌がらせをしてる男子四人組がいたんだけど。 四人組は、私が秋に転校していた時に提出した、家の絵をからかって来たの。『お題は夏の思い出なのに』って。 担任も一緒になって笑ってたわ。近くで哀しそうに、じっと話を聞いてる女の子がいるなって『岡さんは、 てんこうせいだもん。まえのガッコウのしゅくだいと、ちがうはずだもん 』って。前の学校のお題は『大好きな場所』でさ」
「岡ちゃん……」