第35章 「マミは真っ直ぐな女の子なの 」
「アキちゃん……糸さんの孫の|陽良《あきら》くんは、 朝、財布が見つからなくて 。イライラしながら、散々探し回った挙句。見つけた下駄箱の上の財布を 、すでに、自分できちんと回収したのに……」
「おばあちゃんの、糸さんを送ってくれたマミちゃんを見た瞬間 、続行中だったイライラを 。受験や、なんやかやのイライラを。 マミちゃんのせいにして、ブツけて。憂さを晴らそうと したんだよな」
ナミから、連絡を受けて 。心配してマミの家に駆けつけてきた 愛朱実と朔弥がそう言うと。
「糸さんは 、今の記憶は中々繋ぎ止めておけないけれど 、その瞬間だけは 『陽良くんの方が間違ってるよ』って 。朝方に、その姿を見ていた糸さんが陽良くを諭してくれたんだ」
拓眞が答え。
「マミが山際さんの家を飛び出す前に、糸さんが陽良くんに言った言葉を。 残念ながらマミに 届くことはなくて……陽良くんは泣きながら、ご両親に本当のことを話してくれたから……電話で直接陽良くんのご両親から連絡があったのよ。散々謝られたわ」
(いくら謝ってもらっても。 マミの心を傷つけたことは…… もう一生消えないのよ……)
ナミは本当に悔しかった。
「先輩の種橋さん? マミちゃんの会社に連絡したんですよね? 会社は何て 言ってきたんですか? てか、連絡ありましたか?」
拓眞も、許せないと。悔しくて。
その感情の他に、マミが可哀想で仕方なくて。
「『きちんと事の次第を調べてから、改めてお話しさせて頂きます 』まるで他人ごとのような連絡が来たわ……」
『「陽良の嘘で 。マミさんは何もしていない』と、連絡が来たからと『後日 、謝罪に行きますから』って。山際さんから、連絡があったよ』
ってナミから聞いた瞬間 。
真冬の寒空の下。吹雪の中にいたマミは膝から崩れ落ちて……