第34章 母の、ぎゆっ。
カアっ-
顔から火が……
一 気に体温が上がったマミ。
(拓眞さんにしられちゃった?)
ナミが悲しむ……
たとえ嘘でも……
(もうママは、 私を許してくれないよね?)
絶望感に苛まれていたマミに、 追い打ちをかけるように……
拓眞に知られたの?
(嘘なの! 絶対にそんなことしてない!)
叫びたかったのに…… 言葉が出なくて……
散々泣いて。涙が止まっていたのに。
ブァっ-
涙を大きな瞳に溢れさせると。マミは 勢いよく立ち上がって。拓眞の元から離れようと。 駆け出そうとした瞬間。
ぎゅっ。
拓眞に、 抱きとめられて 。
マミは、遠慮がちに拓眞の背中に。両手を回して、ぎゅっ。っとした瞬間こらえきれずに大号泣して来て……
拓眞は何も言わず、彼女の頭に、キャメルのダッフルコートに付いた雪を、左手で優しく払ってやりながら、マミが落ち着くまで待って。
マミが、少し落ち着いたかなっていうタイミングで。左耳に唇を寄せて囁いてやる。
左耳の近くで呟かれた言葉。
「アキちゃん。 朝に、お財布を靴箱の上に見つけて、 手に取ってただろ?」
「え?」
マミは、その言葉の意味を知りたかったのに。
「風邪をひいちゃうから」
って。
「家に戻ってからね」
って。
拓眞に、家まで 送り届けられたマミは……
「マミちゃん!」
玄関先で、今か今かと待っていたナミに、 泣きながら、ぎゅっ。て、抱きしめられて……