第33章 母の娘を想う涙
「今日はマメちゃん来ないのかな?」
拓眞は、独り言をつぶやきながら。 閉館前の図書館で 、後片付けをしていた 。
いつもだいたい 、翌日が休みの前の、火曜日の閉館前に。マミは顔を見せてくれるのに、今日は来る気配がなくて 。
-トゥルトュルトュルルルン -
考え事をしてた時には、ちょっとびっくりするような 音で携帯が鳴って 。
「はい 」
『出塚くん……』
それは 、マミの母親のナミで。 紙芝居の後に連絡を交換したナミ。
その声はすごく切羽詰まっていて。焦っていて。泣いているように聞こえて 。
「ナミさん? どうしたんですか? マミちゃんに何かあったんですか?」
しゃくりあげながら、ナミが話してくれた内容は、信じられない言葉たちで 。
『でも……だから……あの子、それを知らなくて。家に帰りづらくて……』
「心当たりはあるんですか?」
とにかく。落ち着くようにって。優しく優しく。拓眞は、ナミに話しかけて 。
「マミちゃんが行きそうなところは? 俺が探しますから 」
そう言うと。
『ヴィントとルーナとベルクの公園 ……』
「ナミさん ……ママとパパとの思い出の公園 ?」
『そう。あの子は何か、泣きたい事があると公園に行って一人で、ブランコを漕いでるの』
「分かりました。俺行ってってみますから」
そう約束して。
拓眞は、マミが 。泣きながらブランコを漕いでいるであろう公園に向かって 、深々と雪の降りしきる中を駆け出していった。