第4章 黄昏どき
黄昏どき《たそがれ》
借りていた本を返却して。
(ほんのちょっとだけ……)
と。気になってしまった本を手に取り、読書コーナーにて、ページをめくった、|神咲 マミ《かんざき まみ》は。
時がたつのも忘れて、本の世界に引き込まれてしまい。熱中して、目を輝かせていた。
そんな時。 にゅっ……
(ひっ)
熱中していた、マミの目の前。軽く握られた右手の|拳《こぶし》が。小さく机を叩いて来て……
怖すぎて、声も出ないマミ。恐る恐る顔をあげると。透明アクリル板の向こう側。
マミの目の前の椅子に腰掛けた、若い男性がいて。
さらに、マミを驚かせたのは。男性が透明なマスクをしていた事。
そのマスクは。鼻とアゴのラインを、しっかりと保護する形の。|埃《ホコリ》の一つまでしっかりと防ぐ、より本格的なマスクで……
目が合ってしまったマミが、動揺して固まっているのと対照的に。男性はニコリと微笑んで……
「あ、そうだ!」
と。男性は言うと、おもむろに席を立つと、カウンターへ向かって行って。
マミは。
(ビックリした……)
右手で、胸を軽く抑え。
(落ち着かなくちゃ)
(フッ~)
っと。目をつむり、深呼吸をした。