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ぎゅっ。

第15章 結果オーライじゃん


 あの日以来、透明のマスクを使用し始めた拓眞。  

それは、マミも同じ。  

でも、見慣れないのもあって。


透明のマスクをしているのを、同僚とかに。  ちょっと、バカにされているなって。

 感じているマミだけど。  

透明のマスクをしていても、相手が早口で喋ったりすると。  

どうしても。やっぱり聞き取れないこともあって。  


でも、拓眞は違う。  

いつだって。自分の目を見て。ゆっくりと。   大きな口開けて、話すように心がけてくれる。

『マメちゃん』

 とか。呼び方を改めてくれないけど ……


 さっきみたいに、からかったりするけど……

「 私、どうしても『た』行と『さ』行が苦手なんです。お言葉に甘えて 『拓眞さん』って、呼ばせていただきますね」

「うん。それにしても『でづかさん』には『た』行の『て』と『つ』が。それも濁点付きで二つと『さ』も入ってんじゃん。『たくまさん』は『た』と『さ』でしょ? 本人でさえ、噛む名前ってさ。かんべんしてよ。って、感じだよね」

「アハハ。本当だ。私『かんざき まみ』の『ざ』が『じゃ』になって恥ずかしいって思ってきたけど。上には上の名前があったんですね」

 時に、自分の名前で噛むって、何故に? って。  


そっか。だからか。

(府に落ちたよ)  

言いにくい名前で、マミが笑ってくれたたなら。

(結果オーライじゃん)  

そう、拓眞は思った。
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